教育CSRのトレンド情報

インクルーシブ教育

「特別支援」を超える―「インクルーシブ教育」について知る

今、日本の教育は「共生」についての理解と行動の普及啓発に向けて大きく動き始めています。とりわけ、2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据え、学校現場では「共生」(福祉・ボランティアマインドの醸成含む)をテーマとするさまざまな学習が展開されつつあります。「障害のある人も積極的に参加・貢献できる社会=共生社会の実現」をめざし、教育分野では「障害のある者と障害のない者が可能な限り共に学ぶ仕組み」、つまり「インクルーシブ教育システム」を構築することを重要課題として掲げています。※1 
今までの「特別支援教育」のように子どもを分けて個別に支援することから、「合理的配慮」(以下、解説)により、子どものニーズに合わせ、学校を中核とする地域が、子どもたちに「寄り添う」ことが求められていきます。

「合理的配慮」とは、「障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」※2であると文部科学省により定義されています。つまり、「基礎的環境整備」による教室のつくりや、ICT機器の配置、教材の充実、専門性の高い教員の配備における改善のみならず、「幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮」や「発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮」など、より包括的なアクションによって、個々のニーズに応えるしくみ化を推進していくことになります。※3

しかし、これはあくまでも「障害を乗り越える」という観点での一歩にすぎません。本来的な意味は、障害や格差のあるなしに関わらず、すべての子どもが共に生活し、学べる、「誰も排除されない」関係づくり・環境づくりをめざすのが「共生」です。諸外国では法律で全幼児児童生徒が共に学ぶことを義務づけている国が多くあります。日本の場合、「インクルーシブ教育システム」の構築は、地域行政などそれぞれの現場判断に委ねられるのが実情です。教員の流動性の高い公立の教育現場で、スタンダードとなるモデルをどのように作ることができるのか、また、子どもたちの個別のニーズに細やかに応える学びを実現するために、学校はどのように変わらなければならないのか。今後の現場での実践と検証に大きな期待が寄せられます。

学校での「共生」を考えることは、ひいては、地域、社会の「共生」について考える機会でもあります。包括的なアクションを地域ぐるみで実践するためには、企業や、社会人が学校の外からかかわることが重要です。
教員だけでは実現が困難な、子どもたちの「自立」「自己実現」をうながす学習機会を平等に、広く提供できる可能性が高まります。企業の教育支援のこれからのテーマにも、さまざまな「格差」を解消する「共生」の視点を取り入れることが求められます。

※1 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課、インクルーシブ教育システム構築事業
   http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/06/16/1358945_02.pdf

※2 文部科学省、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)概要
   http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1321668.htm

※3 国立教育政策研究所、インクルーシブ教育システム構築支援データベース
   http://inclusive.nise.go.jp/

この記事の最終更新日:2016年12月2日

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